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リチウムイオン電池の危険性

モバイルバッテリーの発火事故に注意

中川 潔(安全安心株式会社)

労働安全衛生コンサルタントとして、業界問わず安全で快適な職場づくりをサポート。
安全衛生診断、現場指導や安全教育などを行い、企業の安全衛生レベル向上に努める。

必需品に潜む発火・火災リスク

場所を選ばずにスマートフォンやタブレット端末を充電できるモバイルバッテリー。近年、発火事故のニュースを耳にすることが多くなりました。モバイルバッテリーにはリチウムイオン電池(以下、LIB)が使われています。この電池は高いエネルギーを効率よく蓄えられますが、火災などの危険性を併せ持っています。

LIBの構造は図1のとおり、正極・負極間に数マイクロメートルのセパレーターが挟まれています。小さな衝撃でもセパレーターが傷付き、ショートが発生し、急激に発熱・発火する危険があります。

リチウムイオン電池構造イメージ

発火の原因は衝撃だけではありません。粗悪品の使用はもちろん、過充電や高温環境、水濡れ、経年劣化なども引き金となります。過充電については、満充電になると自動で充電が止まる機能があるため安全と思われるかもしれません。しかし、モバイルバッテリーの多くには、図2のように複数の円筒形LIB(以下、セル)が内蔵されています。通常、充電時は各セルに同じ電気容量が貯められます。

リチウムイオン電池充電イメージ

しかし、品質にばらつきがあったり、粗悪品の場合には、各セルで電気残量が異なってくることがあります。例えば図3は、全体で電気を50%消費した状態を表していますが、各セルの残量は異なります。この状態から消費した分を充電すると、各セルに50%分が蓄えられるため、中央のセルは100%に達した後も充電を継続してしまいます。この許容量を超えた充電が過充電です。

また、セルは完全に放電(過放電)してしまうと、充電ができなくなることがあります。もし、ひとつのセルが過放電になると、ほかのセルに多くの電気が充電されるため、過充電となります。

安全に使用するためのポイント

  1. ❶ 衝撃や圧力を加えない
  2. ❷ 高熱下(目安は35℃超)で使用・放置しない
  3. ❸ 「PSE」(電気用品安全法の基準に適合)マークのある充電器や製品を使用する
  4. ❹ 適切な充電残量(目安は20〜80%)で使用する※1
  5. ❺ 長期保管時は、充電残量を50〜60%程度にし、高温にならない場所で保管する※2
  6. ❻ ふくらみ、触れられないほどの高温、焦げ臭さが発生したら使用を中止する

万が一、出火した場合の初期消火では、決して水を使わず※3、消火器で消火してください。炎がなく煙が出ているときは、大量の水をかけて冷却することが効果的です。その場で水を使うことがむずかしい場合、火ばさみなどで屋外の安全な場所に運んだうえで、水をかけましょう。

また、不要になったモバイルバッテリー類は絶対に燃えるごみや不燃ごみとして排出せず、自治体の指示に従い適切に処分しましょう。

  1. ※1 ※2:ランプ点灯数(通常4つ)で充電残量を表示するタイプの場合、❹は1~3個点灯している状態、❺は2個点灯している状態(100%充電は、寿命が短くなるおそれがあります)
  2. ※3:出火している状態で水をかけると、水蒸気爆発や有毒ガス発生の可能性があり危険

リチウムイオン電池は便利な半面、大きなリスクもともないます。上記の注意事項や説明書の記載を守り、安全な使用を心がけましょう。