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機械の危険を事前に排除

作業の最初は安全点検から

中川 潔(安全安心株式会社)

労働安全衛生コンサルタントとして、業界問わず安全で快適な職場づくりをサポート。
安全衛生診断、現場指導や安全教育などを行い、企業の安全衛生レベル向上に努める。

重大な労働災害を未然に防ぐ

機械設備等による事故では、可動部に挟まれて死亡するケースや、指・手・腕の切断といった深刻な労働災害が多数発生しています。

原因は、可動部に手などを出すような不安全行動だけでなく、機械の不調によるものも少なくないため、異常の有無や正常作動を確認する始業前点検が重要です。非常停止装置が設けられていても故障していれば作動せず、作業者を守れません。

ここでは、始業前の安全点検における手順や注意点を紹介します。

【1】点検項目

作業者が点検すべき項目は、大きく次の2点です。

1外観点検
破損や異常がないかを目視で確認(周囲の状況、電源ケーブルの破損など)
2作動点検
各部が正常に動作するかを確認(電源起動後の状態確認、作動および停止等の機能点検、安全装置の点検、試運転状態の点検など)

【2】点検の流れ

1点検手順書および点検チェックシートを作成し、合否の判断基準を明確にする。
2作業者への教育を実施する。
点検の重要性を教育し、手順書とチェックシートに従い、点検作業の手順を丁寧に指導しましょう。合否の判断ポイントも併せて説明が必要です。
機械の点検には「主電源起動前点検」と「主電源起動後点検」があります。主電源起動後は機械が実際に作動するため、挟まれや巻き込まれの危険をともないます。そのため、点検手順書を基に、機械の作動内容や注意点を事前に明確にし、作業者に的確に指導してください。異常時の対応手順や報告の流れについても必ず指導しましょう。
3作業者に点検チェックシートに基づいて点検を実施させる。
作業者が判断に迷う場合は、判断基準を再度説明してください。
4点検結果を上司に報告させる。
上司は結果を確認し、必要な指示を行いましょう。

以下に、動力プレス機械の始業前点検のチェックシート例を示します。点検チェックシートはメーカーの取扱説明書などを参考に作成してください。

■始業前点検チェックシート(動力プレス機械)

●主電源起動前点検
項 目 内 容
周囲の状況
  • プレス周辺に不要なものはないか
  • 金型や材料を運ぶ通路に支障はないか
  • 作業に必要な照度は確保できているか
外観の点検
  • 傷、ヒビ、変形、変色等はないか
  • 操作盤のスイッチ類に異常はないか
油圧、潤滑
  • 油圧系統に油漏れ等の異常はないか
  • 潤滑油の量は適正か
クランクシャフト
  • ボルト・ナットの緩みはないか
フライホイール
  • ボルト・ナットの緩みはないか
金型の取付状態
  • 取付位置の確認
  • ボルト・ナットの緩みはないか
電源
  • 主電源からプレス機器への電源ケーブルに異常はないか
安全装置
  • 光線式の場合、切り替えキーは抜かれ、安全装置は有効になっているか
手工具
  • 作業に必要な手工具は変形等がないか
●主電源起動後点検
項 目 内 容
クラッチ
  • 作動状況および停止位置を確認
ブレーキ
  • 作業状況および上死点停止角度を確認
電動機
  • 異常な音および異常な振動や臭いはないか
運転操作
  • 寸動は正常に作動するか
  • 一行程ー停止は正常に作動するか
非常停止装置
  • 非常停止装置の作動を確認
安全装置
(ガード式)
  • 所定の位置に設置されているか
  • ガードの破損等はないか
  • 指などが入るような隙間が生じていないか
安全装置
(両手操作式)
  • 操作ボタンは所定の位置になっているか
  • ボタンの操作に異常はないか
安全装置
(光線式)
  • 取付位置は正常か、がたつきはないか
  • 光線軸に触れると停止するか(すべての光線軸を確認する)

点検は安全作業の基本です。始業前点検の重要性を周知し、確実に実施させるとともに、管理者はその実施状況を厳正に確認しましょう。