中川 潔(安全安心株式会社)
労働安全衛生コンサルタントとして、業界問わず安全で快適な職場づくりをサポート。
安全衛生診断、現場指導や安全教育などを行い、企業の安全衛生レベル向上に努める。
ワイヤロープの使い分け
労働安全衛生コンサルタントとして、業界問わず安全で快適な職場づくりをサポート。
安全衛生診断、現場指導や安全教育などを行い、企業の安全衛生レベル向上に努める。
ワイヤロープは製造、物流、建設など、さまざまな現場で使用され、主として、クレーンのフックに掛けて荷物を吊り上げる「玉掛け用」と、貨物自動車の荷台などに荷物を固定する「台付け用」の2種類があります。
見た目は同じように見えますが、製造方法や強度を示す安全係数※が異なり、玉掛け作業に台付け用ワイヤロープを使用すると、切断など大きな事故につながります。ワイヤロープの区分を理解し、正しく使用することが大切です。
※品質のバラつきや使用中の摩耗などを考慮した指標。数値が大きいほど切れにくいと判断される
複数本の素線をより合わせてストランドとし、このストランドを複数本より合わせたものがワイヤロープです。ストランド数が6本の6ストランドロープが代表的で、このワイヤロープに輪(アイ)を作ったものが現場で使用されています。
区分 | 使用目的 | 安全係数 |
---|---|---|
玉掛け用 | 荷や物を吊り上げる | 6以上 |
台付け用 | 荷や物を固定する | 4以上 |
玉掛けワイヤロープに関しては、クレーン等安全規則第219条でアイ部分(輪になる部分)の差し込み方法(編み込み方法)が決められており、半差し(ストランドを半分に切り落としてさらに編み込む)を行うことで強度を高めています。一方で、台付けワイヤロープには半差しをしないのが一般的です。そのため、玉掛けワイヤロープと比べて強度が低く、荷重がかかると編み込み部分が抜ける可能性があります。
新しく購入した際には商品タグなどで種類を判別できますが、タグがないと区別がむずかしくなります。その場合は、下図を参考に見分けましょう。
ストランドを3回以上編み込み(丸差し)、ストランドを半分に切り落として、さらに2回以上編み込むため、素線のひげが2カ所出ています。
半差しを行わないため、ひげは1カ所です。
玉掛けワイヤロープも台付けワイヤロープも、作業開始前の点検が法令により義務づけられています。種別を確認し、切れ、変形、さび、編み込み状態を点検したうえで作業を行いましょう。
吊り荷が落下した場合、重大な事故につながります。ワイヤロープの区分を理解し正しく使用しましょう。玉掛け用と台付け用の両方のワイヤロープを使用する事業所はとくに注意が必要です。