中川 潔(安全安心株式会社)
労働安全衛生コンサルタントとして、業界問わず安全で快適な職場づくりをサポート。
安全衛生診断、現場指導や安全教育などを行い、企業の安全衛生レベル向上に努める。
化学物質「混ぜるな危険!」
労働安全衛生コンサルタントとして、業界問わず安全で快適な職場づくりをサポート。
安全衛生診断、現場指導や安全教育などを行い、企業の安全衛生レベル向上に努める。
2024年9月、広島県内の医療機関で塩素ガスが発生し、9人が入院する事故がありました。人工透析装置を消毒するための次亜塩素酸ナトリウムを補充する際、誤って酢酸を混ぜてしまい、化学反応が生じて塩素ガスが発生したことが原因でした。
化学物質には、単体で使用する場合は問題がなくても、他の物質が混ざると化学反応が起こり、人体に危害を与えるものがあります。身近な例では、酸性の洗剤と塩素系の洗剤を混ぜると塩素ガスが発生します。なお、意図的に混ぜなくても、塩素系の洗剤が入っていた空の容器に酸性の洗剤を入れると、同様に塩素ガスが発生することがあります。化学物質が入っていた容器は使い回さず、専用の容器を用意して区別するのが安全です。
法令により同じ場所に貯蔵することが禁じられているものもあります。例えば、危険物第4類に該当するガソリンやアルコール類と、危険物第6類に該当する過塩素酸、過酸化水素、硝酸などは同じ場所に貯蔵できません。第6類は酸化性液体であり、火災が生じた際に大量の酸素を供給するため、炎の勢いが大きくなり危険だからです。
作業者は、野菜等の殺菌に使用する殺菌水を作る殺菌水生成装置の次亜塩素酸ナトリウム液の残量が少ないことに気づき、補充しようとしました。その際、誤って塩酸液を入れてしまい、塩酸と次亜塩素酸ナトリウムの化学反応により塩素ガスが発生し、当該ガスを吸引して被災しました。ミスの原因として、内容物についての表示が不明確であったことが挙げられます。
ある企業の化学実験室において接着剤(危険物第4類)の加熱試験を行っていた際、温度測定を怠ったことにより温度が過度に上昇し、発火しました。作業者がそれに驚いて立ち上がった拍子に硝酸が入った容器を誤って落として割ってしまい、発火した接着剤に硝酸からの酸素が供給され、火災が拡大しました。
事例1や事例2のような事故を回避するには、化学物質の取扱い等の作業教育を十分に行うこと、危険に対する作業者の意識を高めること、適切な管理・運用ルールが整備されていることが重要です。
化学物質には、混ぜてよいものとそうでないものがあります。危険性を周知し、管理・運用ルールを整備したうえで作業方法を指導しましょう。