災害防止女性作文コンクール大賞受賞作品
職場でのルール
小杉 智里 (コスギcarpenter工房・福岡県)
職場の"安全対策"について書かせていただくに当たって、まず最初に我が家の家族構成や職業からご紹介します。
私は現在、主人と3歳の娘との3人で生活しています。夫婦共に建築業をそれぞれ営んでおり、年に何度か仕事のやりとりをする様な仲です。主人の職業は「大工」で、新築やリフォーム工事を多くしています。そして、私の職業は「左官業」といい、主にセメント類を用いて施工する職種です。
私がこの職業に就くことになったのは、三十年程この「左官業」に携わっている実父が高校を中退してしまった私に、「職場に手伝いに来い」と声を掛けてくれたのがきっかけでした。職人気質で几帳面な父は、私を職場で厳しくしつけてくれました。
それから十年が経ち、現在では自分でも現場を請け負う機会を頂くようになりました。
今回は、そんな私と父との「職場でのルール」について、お話させて頂こうと思います。
私達の仕事内容は、セメント材を用いた壁塗や、コンクリートブロック塀、風呂や玄関のタイル工事等、家やお庭のあらゆる部分の工事をしています。
外仕事が多い為、真夏は炎天下での作業となり、足元がふらつくこともしばしばです。
更に、電動工具の使用や、100㎏前後の物を運ぶこともあり、年中危険を伴います。
現場作業中に起きやすい事故の例としては、足場・脚立の上での作業中の転落事故。電動工具使用中のケガ。そして、私達の間でよく耳にするのが、つまずき・転倒した際の"鉄筋"にかかわる事故です。
"鉄筋"とは、直径1㎝前後の鉄の棒のことです。私達も、CB(コンクリートブロックの略)を積む際に、必ず使用する材料です。
事故の内容は、つまずき・転倒した場所にたまたまその"鉄筋"が立っており、「顔面に刺さって失明した」とか、「刺さった場所が悪く、死亡した」等という話も聞いたことがあります。
他にも、転倒した際にCBやレンガのカドで頭部にケガをおった等、つまり、足場の悪い工事現場では、常に注意が必要なのです。
そこで、先頭でお話した「職場でのルール」が必要となってきます。ルールも年々増えたり変わったりしますが、沢山ある中から、一部をご紹介しようと思います。
まず、基本とされているのが、「足元の整理」です。
一見、とても簡単に思えるこのルールですが、一日のノルマが決められており、慌ただしく施工していく中で、常に足元を良い状態にしておくのは、至難の業です。
ですが、父曰くこれには2つのメリットがあり、1つは整理することにより、紛失物が無くなり、能率が良くなるということ。そして、2つ目は自分達自身のケガもですが、何より大切なお客様の事故を防げるということです。
次に、「工事を施す際に、小さな段を作らない」というものです。
通常、新規で作る段の高さは15~20cm前後です。2㎝や3cmの小さな段を作ると、見落としがちになり、つまずきやすく、事故につながる可能性が高くなります。
更に、我が社に限らず、最近必ず必要とされているのが、先程例に挙げました「鉄筋」に関するものです。
CB等の施工途中に、鉄筋の切り口・先端部がむき出しになる場合は必ず、「鉄筋キャップ」というプラスチック製のキャップをかぶせるのが、メーカー・個人の会社を問わず、現場での暗黙のルールとなってきています。
このように、私達は現場の安全について、常に話し合い、状況に応じて必要となるルールをつくっていくことにより、それらを「安全対策」としています。
これからも、父や主人を含む周囲との話し合い・意見交換を絶やさずに、より良い安全環境作りに精進していきながら、腕を磨いていきたいと思います。